【ウォーレン・バフェット】高く、買わせた男
ウォーレン・バフェットの投資を『帝国』に変えた右腕 チャーリー・マンガー
1972年。2500万ドルの買収案件を前に、世界一の投資家は渋っていた。
「高すぎる」
カリフォルニアのチョコレート会社、シーズ・キャンディーズ。
提示額は純資産の3倍。
安く買うことだけを信条にしてきたバフェットにとって、それは掟破りの買い物だった。
「払え」と言った男が、隣にいた。
この買収が、のちに時価総額100兆円企業を生む転換点になる。
天才は、吸い殻を拾っていた
1959年、オマハの夕食会。
29歳のバフェットは、7歳上の弁護士チャーリー・マンガーと出会う。
当時のバフェットの投資法は、師ベンジャミン・グレアム直伝のものだった。
落ち目の会社を、清算価値より安く買う。
残った一服分の利益を吸って、捨てる。
バフェット自身が後にこう名付けている。
『シガーバット投資』。道に落ちた吸い殻を拾う投資法だ、と。
小さな資金なら、それで勝てた。
だが吸い殻を拾い続けて、帝国は築けない。
右腕は、NOだけを言った
マンガーには異名があった。
『おぞましきNOマン』。
バフェットが持ち込む投資案を、次々に却下する男。
経営学のMBAどころか、ビジネススクールにすら通っていない弁護士が、世界一の投資家に言い続けた。
「君は、まっすぐに考えられていない」
イエスマンを周りに置くのは簡単だ。
だがバフェットは後年、株主総会でこう語っている。
そう言ってくれるパートナーがいることこそが、素晴らしいのだ。と。
「良い会社を、まともな値段で買え」
マンガーの主張は、一貫していた。
まともな会社を素晴らしい値段で買うな。
素晴らしい会社を、まともな値段で買え。
・安さではなく、ブランドを見ろ
・清算価値ではなく、値上げできる力を見ろ
・一服の利益ではなく、10年後も金を生み続ける構造を見ろ
シーズ・キャンディーズは、その試金石だった。
グレアム式の計算では、高すぎる。
マンガー式の基準では、盗んだも同然の安さ。
バフェットは渋りながら、払った。
2500万ドルが、20億ドルになった
シーズはその後、累計20億ドル超の税引前利益をバークシャー・ハサウェイ社にもたらす。
そしてこの成功体験が、15年後のコカ・コーラへの10億ドル投資につながった。
1965年から2022年、バークシャーの年平均リターンは約20%。
S&P500の、およそ2倍。
バフェットは2015年の株主書簡で、種明かしをしている。
チャーリーが私にくれた設計図はシンプルだった。
まともな会社を素晴らしい値段で買うことは忘れろ。素晴らしい会社を、まともな値段で買え。
そして、こう締めた。
バークシャーは、チャーリーの設計図どおりに建てられた。
私の役割は、現場監督にすぎない。
60年、隣に座り続けた
2023年11月28日、マンガーは99歳で死去した。
株主総会の壇上、マンガーの決まり文句は一つだった。
「付け加えることは、何もない」
語るのはバフェット。
設計したのは、マンガー。
出会いから64年。
世界一有名な投資家の隣には、世界一有名な『NOと言う男』が座り続けた。
右腕とは、
トップの成功体験そのものを、描き替える人間のことだ。
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