人脈という贈り物 25回の交流会で組織を回す、ナンバーツーの仕事術。

Mirarch Consulting 取締役 京久保 尚希

「カードローンの枠が、残り17万円になっていた」

東京進出から3ヶ月、売上ゼロ。3時間睡眠で朝6時のミーティングと夜の交流会を回し続けた、20代後半での挑戦。

そこから2年で年商10億円規模へ。Mirarch Consulting取締役・京久保が編み出した先に与えるというギブ起点の人脈構築術と、いま挑む『自分のクローンを育てる』という属人化解消の現在地に迫る。

人脈という贈り物──「お金以外で人を救う」と決めた、銀行員の3年目

2020年4月、コロナ禍で銀行員のキャリアをスタート。3年連続で営業成績1位を取りながらも、京久保は違和感を抱え続けていた。

「銀行の営業は、過去の決算書でしか企業の未来を判断できない。コロナ融資で苦しむ経営者を見て、お金以外の何かで目の前の人を救えないかと考えるようになったんです」。

出した答えは、『人脈日本一』というキャリア設計だった。

「人脈は、お金のかからない贈り物です」。

お金やモノは、与えれば自分から減る。だが人脈だけは、残り続けたまま誰にでも渡せる。この信念を胸に、銀行同期など5人で東京へ向かった。

残高17万円の3ヶ月──修羅場で身につけた、量で突破するメンタリティ

「銀行のバックボーンが外れ、無名の会社で名刺交換しないといけない。頼れる社長もいない。みんなカードローン枠の数百万円をパンパンに広げて来てるんです。それでも、やってもやっても売上が上がらなかった」。

打ち合わせの相手は、金銭的余裕のない個人事業主ばかり。残高はマイナスからスタートし、3ヶ月目には残り17万円。家賃のかかる東京で、生き延びられる保証はなかった。

それでも止まらなかった。シェアハウスで寝食を共にし、3時間睡眠で「俺らならできる」と唱え合いながら、朝6時のMTG、9時からのアポ、夜の交流会のサイクルを回し続けた。

「もうやるしかない、という無駄な自信だけはありました」。

そして2023年11月、転機が訪れる。営業代行の打ち合わせの場で、現代表・吉住と出会ったのだ。

「同世代で、同じ価値観。社会にインパクトを与えたい、自分の取り分は最後でいい。そう本気で言える27歳は本当に少ない。『この人は本物だ』と感じました」。

出会いから2ヶ月後、Mirarch Consultingにメンバーごと合流。互いの弱みを補完し合う関係が、ここから始まった。

直感を捨てない右腕──KPIから一歩引くことが、ナンバーツーの仕事になる理由

現在、グループの売上構成比はScoreXが約8割、Mirarch Consultingが約2割。年商はおよそ10億円規模に達した。京久保氏の役割は、フロント営業・交流会主催・営業育成、そして経営陣への集客導線づくりだ。

代表・吉住は20歳で起業しバイアウトも経験した経営のプロ。KPI設計や数字分析は、吉住ともう1人の取締役である西村が主導する。京久保はあえて一歩引き、自身の強みである「直感」と「対人関係」に集中する。

「ナンバーツーは受け皿。トップが全体を見渡さなければならない分、自分は誰とでも話せる存在でいたい」。

月25回の交流会を主催し、毎回人が集まり続ける。100億・200億規模の経営者ともパイプラインを持ち、新規アポは紹介中心。「人当たりは先天的なものもあると思います。ただそこに、銀行員時代に積み上げた財務・税務・法務・FP等16資格と、金融出身の対話力が乗っかっているのが自信にはなっていますね」。

クローンを育てる──属人化を解体しないと、5年後の130億は遠い

組織が拡大していく過程で、京久保は最も重い決断を迫られた。つい数ヶ月前、創業初期から共にあった仲間との別れである。

「人としては大好きでした。でも会社は日本一を目指していて、新卒15名を含めた採用で組織は広がっていく。仲間内で1億円規模を楽しくやっているのは、もう今やるべきことじゃなかった」。

一対一で向き合い、こう告げた。

「頑張らないなら辞めてくれ。頑張るなら、俺はずっとお前とやりたい」。

返ってきた答えは「これ以上は頑張れない」。だったら友達に戻ろう、そう送り出した。離脱後、組織の空気は変わり、翌月は増収増益となった。

いま見据える最大の経営課題は、属人化からの脱却である。育ったメンバーをクローザーに抜擢し、自身や代表のアポを段階的に渡していく。組織は14名から、新卒15名を加えた29名へ。

「私が万が一いなくなっても回る『京久保のクローン』を育てる。それが、いまの最大のミッションです」。

業界トップの背中──5年で130億円、業界ナンバーワンを抜くロードマップ

Mirarch Consultingの5年計画は、業界ナンバーワン企業を抜き、年商130億円規模に到達することだ。来期30億、2年後50億、3年後70億、4年後100億、5年後130億と、ロードマップは、すでに描かれている。

そしてScoreXは、経営者にとっての【LINE】のような存在を目指す。リード獲得とパートナー開拓における、導入が前提のインフラ。それが目標だ。

最後に、これから50人、100人と増える組織の後輩たちへ。京久保はこう語った。

「どのポジションになっても、低姿勢で謙虚に。誰にでも『ありがとう』が言える人に、管理職になってほしい。下が立てた成功は褒め、失敗は自責で受け止める」。

「成功は称賛、失敗は自責」。

だから今日も京久保は、月25回の交流会で名刺を配り、誰かの仕事を誰かに紹介し、自分の取り分を最後に回す。残高17万円のあの夜から変わらず、ただ『先に与える』を続けている。

そして、こう付け加えた。

「右腕の仕事って、結局は『トップが見落としているところ』を引き受けることなんです。数字が得意な代表なら、自分は人間関係。決断が早い代表なら、自分はブレーキ。トップと同じ強みを伸ばしても意味がない。逆だから、価値がある」。

もしいま、あなたが社長の右腕として、「自分はトップほど数字に強くない」「決断が遅い」と引け目を感じているなら、京久保はこう言うはずだ。

「引け目こそ、右腕の仕事のありかだ」。

編集後記

京久保氏に取材して印象に残ったのは、「自分は数字分析が苦手だから、決断にはあえて入らないようにしている」という一言だった。右腕=オールラウンダーという思い込みがあったが、彼の場合は違う。トップの吉住氏が左脳、自分は右脳。役割を完全に分業した上で、「クローンを育てる」と言い切る。 苦手を消すことに必死になっている右腕は多い。だが京久保氏は、苦手を温存したまま、得意の領域だけを深く掘る道を選んだ。No.2のキャリア戦略として、一つの解答を提示された気がする。