成功を設計する男の、熱く冷静な参謀
採用に魔法なんてない。あるのは、やり抜くための仕組みと、たったひと手間の執念だ。
「社長の仕事から何を奪えるかが、全てだと思うんですよ」
伴は、熱を宿した声で淡々と言い切った。
福岡を拠点に、採用支援を生業としている株式会社RE.make(リメイク)。その心臓部を司るのが、専務取締役の伴だ。
彼の会社で主軸の採用支援サービス『HITOTEMA』は、単なる求人代行ではない。クライアント企業の採用責任者そのものになり代わり、代表や現場を巻き込みながら戦略を練り、入社後の定着までを丸ごと請け負う。代行ではなく、設計。伴はクライアントの組織に深く入り込み、曖昧だった採用を持続的な勝てる形へと変貌させていく。
伴の流儀は、『社長の仕事をどれだけ奪えるか』にある。 代表・池尻が放つビジョンや情熱を、伴が社員のプライベートまで踏み込む深い個別マネジメントへ落とし込む。一見するとウェットな対話だが、その目的は「組織パフォーマンスの最大化」という冷静な設計に基づいている。
網走の理系が選んだ、市場価値への武装
北海道・網走出身。彼のキャリア形成は、驚くほど冷静な計算の上に成り立っている。「学生時代は社会人で必要だと思いゴルフを始め、社交性のある自分の市場価値を上げるために、あえて理系に進んだんです」。大手上場企業の購買部門で約10年。徹底的にコストと効率に向き合った男が、31歳で選んだ次なる戦場は、未体験、そして最も不確実な『人』の市場だった。
だが、そんな彼が代表・池尻のビジョンを聞いた瞬間だけ、熱を帯び計算より先に身体が動いた。代表の思いを構造化できるのは、自分しかいない。
彼は従業員として入社した。だが、その視線は最初から経営を見ていた。 彼が最初に掲げたミッションはシンプルかつ過激だ。 「代表の仕事を、奪えるだけ奪おうと思ってやってました」。 トップがビジョンを語り、ゼロイチを生み出すことに集中できるよう、実務と管理のすべてを剥がし取り自分の領域にする。それが、彼が定義した右腕の仕事だった。
銀行、資金繰り、そして経営への参画
大手企業から、創業間もないベンチャーへ。業種も職種も、毎日が何もかも前職と異なる環境へ飛び込んで半年。現実は想像を超える鋭さで牙を剥いた 。順風満帆に見えたRE.makeに、キャッシュアウトの足音が迫ったのだ。営業を拡大すれば売上は立つが、獲得コストも嵩む。当時のサービス継続率はわずか25%。このままでは潰れる。
伴は、一人で苦悩し、崖っぷちに立つ代表・池尻の姿を間近で見ていた。代表に一人で背負わせてはいけない。これは自分の問題だ。 そして、腹を括った。 「僕も一緒にやります」
ここから先は、気合いの話ではない。資金繰りは感情では持ち直さない。必要なのは、手順と優先順位だった。
銀行出身の父を持つ彼は、金融機関との折衝の矢面に立ち、資金調達に奔走した。会社全体のコストコントロールも先導した。ただし、やみくもに削らない。削っていいものと、削った瞬間に会社が弱るものを分ける。さらに自ら営業の最前線に立ち、大型案件を獲得。そして粘り強い交渉の末、年間一括での前倒し入金を実現し、峠を越えた。
その後、従業員たちからの強い推薦もあり、専務へ昇格した。だが、伴から危機感は消えなかった。むしろ本当の問いは、ここからだ。二度とあの恐怖を繰り返さないために、次の一手をどう打つか。伴は一つの生存戦略にたどり着く。
動けば動くほど金が出ていくなら、動かずに価値を出すことを考えよう。根性だけではない、継続する仕組みだ。
彼が出した答えは、営業偏重からの脱却と、徹底的な「継続率(カスタマーサクセス)」へのシフトだった。 安易な業務委託ではなく、責任感の強い正社員中心の筋肉質な組織へ再編。広告費を削り、そのリソースを顧客満足度の向上へと全振りし解約を防いだ。売って終わりではなく、採用、その先まで伴走する。その執念は、顧客からの信頼という形で返ってきた。勝ち筋は派手ではない。目の前の顧客に向き合い、離脱の芽を一つずつ潰し、積み上げる。継続率を上げれば、未来の売上が予測可能になる。資金繰りが設計できるようになる。結果として、継続率は2期で25%から72%へ驚異的な飛躍を遂げた。同じ轍を踏むことが決して無いように、常に問いを立て、仕組みをアップデートし続ける。あのキャッシュアウトこそが彼を単なる管理職から、痛みを背負い、数字で未来を語る本物の経営者へと覚醒させたのだ。
問いと配慮の精密機械
現在、正社員とインターン含め19名の組織を束ねる伴。 彼のマネジメントスタイルは、超がつくほどの個別最適化だ。 「この子の強みは何か、どう関われば一番パフォーマンスが出るか。それを一人ひとりとの徹底的なコミュニケーションで見極め、対応を変えるんです」。リモートワークの社員とも毎月2時間の面談を行う。プライベートまで含めたその人の人生に向き合い、状況把握と役割設計を欠かさない。その根底にあるのは、異常なまでの人への好奇心と、彼の最大の武器である質問力だ。
「『問いが道を拓く』が僕の座右の銘なんです」。 なぜその行動をするのか? 何が不安なのか? 問い続けることで、相手の思考を加速させ、組織の解像度を極限まで高める。 社長の直感的な指示も、彼はそのまま現場には落とさない。 「社長はこっちに連絡するだろう。じゃあ、僕はあえて現場のキーマンに、こんな長文メールを送っておこう、という動き方を意識しています」。 トップの死角を、問いと配慮で埋め尽くす。それが伴のいう右腕としての矜持、いわば『最強のダブルス』だ。そして、この死角つぶしは、今日のためだけではない。伴が見ているのは、もっと先のRe.makeの未来だ。
2029年、正しさの証明へ
「2029年に目標としている上場は、僕らの正しさを社会に証明するための通過点なんです」
伴が語る上場は、富や名声ではない。狙っているのは、資金調達や信用力の枠組みを獲得し、社会的に正しい会社としての地位を確立することだ。 採用という不確実で曖昧な領域を、誰もが再現できる技術として昇華させる。一部の天才による、属人的な芸から解放していく。その設計が、どこまで社会に通用するかを測る。上場は、そのための証明装置である。勝ち続けるための構造を、会社の外側にもつくる。組織は中期で30名、将来的には50名規模を視野に入れる。 その拡大を支えるのは、現行の「HITOTEMA」を軸としたプロダクトの進化だ。 狙いは単純。カバレッジを広げ、収益を安定させ、会社が息切れしない形をつくる。
だが、伴が本当に描いているのは、その先にある。制度としてプロの採用担当者を市場に供給し、最適なマッチングを社会実装すること。そして、海外進出に挑む企業の、最強の採用パートナーになる。言語や文化の壁を越えて採用を設計していく。自社の利益だけではなく、日本の採用市場そのものを構造化する野望だ。
最後に、同じ境遇で苦悩する右腕たちに向けた、伴の言葉が刺さる。
「トップにしかない経験がある一方で、ナンバー2、右腕にしかできない経験も多い。最強のナンバー2を目指し、ともに経験を積んでいきましょう」 。
右腕とは、ただトップに寄り添う者ではない。トップの重荷を奪い、自らも泥をかぶり、同じ景色を見る覚悟を決めた者の呼び名だ。
自分がつくった型が、自分の手を離れても世界を動かし続けること。
仕組みを愛するこの男にとって、それこそが人生をかけた究極の『ひと手間』なのだ。
編集後記
伴さんへの取材を通じて見えてきたのは、右腕という生き方の新しい定義だ。 支えるのではない、奪うのだ。その冷徹なまでの合理性と、修羅場で見せた泥臭い執念の融合。 2029年、彼がその正しさを証明したとき、日本の採用市場、そして右腕の地位は、今とは全く違う景色になっているに違いない。
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