小さな仕事を、丁寧に ―代表のnoteに惚れて、右腕になった女性の流儀。

「障害児、というキーワードで求人を検索していたら、松浪さんが飛び込んできた」

岡山県。国立大学の事務職員として働いていた加藤が、重度知的障害のある小学3年生の息子を育てながらキャリアの再出発を模索していた時、クラウドソーシングサービスの検索欄に打ち込んでいた一語がある。『障害児』。

2025年8月、合同会社おおなみこなみに参画してから、加藤は【Nami】オンライン秘書チームのディレクション、代表・松浪のアシスタント業務、複数のスクールバックオフィスを横断的に担ってきた。加藤が編み出した『小さな仕事を丁寧に積み重ねる』流儀と、代表のnoteに惚れて飛び込んだ物語に迫る。

『障害児』の検索で、飛び込んできた求人

大学の元事務職員が、松浪代表のnoteに惚れるまで

加藤の人生には、二つの軸がある。一つは、岡山県という土地。生まれ育ち、今も暮らす場所。もう一つは、重度知的障害のある息子との日々。

高校を卒業し、国立大学法人の職員採用試験を経て、配属された。産休・育休を挟みながら、10年近く在籍した。だが、息子が保育園から『これ以上預かるのが難しい』と告げられ、退職せざるを得なくなった。県内の実家近くに戻り、療育の場を探すところから、加藤の新しい生活が始まった。

しばらくは、息子の障害について学ぶことに時間を注いだ。だが、5年ほど経った頃、加藤の中で違う気持ちが芽生えた。

「療育に預けたら子供が成長するかな、みたいな希望を持つじゃないですか。でも重度の知的障害だと、成長もすごくゆっくりで。私、今何のために生きとるんかな、みたいに思っちゃったりして」。

夫は医療従事者で、日々キャリアを積んでいる。家事も育児もよく支えてくれる。だが、その姿を横で見ていると、加藤の中で焦りが生まれた。

「自分の生き方を、見つめたいと思った」。

在宅ワークに踏み出すため、加藤はまずクラウドソーシングサービスに登録した。検索機能に、自分の個性を打ち込んだ。障害のある子を育てている、というのは加藤の中で確かな属性だった。

そのキーワードで、松浪の求人が飛び込んできた。

「すごく書いてあることを読んで良いなって思って、すぐ応募した。募集文の中に、オンライン秘書チーム【Nami】というキーワードがあって。ちょっと気になるから、ググったんですよ。そしたら松浪さんが書いてるnoteの記事が見つかって」。

代表・松浪自身が、うつ・がん・医療的ケア児の育児という試練を経てきた人物であること。noteには、その背景がずらりと書かれていた。加藤が感じてきた挫折と、驚くほど似ていた。

「面接受ける前から、この人に会いたいと思った」。

加藤は、面接に臨む前からすでに松浪と、この会社に惚れ込んでいた。

小さな仕事を、コツコツと積み重ねた

気づいたら、いろんなチームに私がいた

2025年8月、加藤は【合同会社おおなみこなみ】に業務委託アシスタントとして参画した。最初の面接で松浪から告げられた仕事は、地味だった。営業リストの作成だった。

「結構、地味な仕事ですよ、って松浪さんに面接で言われました」。

だが、松浪は同じ席で、加藤のこれまでの経歴や、子供のこと、家族の背景を丁寧に聞いてくれた。そして、こう告げた。

「オンラインスクールのバックオフィスも、良かったら、加藤さんだったらできそうなんでやってみませんか」。

入って数ヶ月、加藤は名刺登録、動画音声作成、企業の勤怠管理など代表から次々と新しい仕事を託されるようになった。

「松浪さん、本当にいろんなお仕事を、『これやれる人いませんか』みたいな感じで、チームに降ろしてくださるんです。私、結構いろんなことをやりたいタイプで、手を挙げてどんどん受けていったら、自然と、いろいろやるようになって」。

「気づいたら、いろんなチームに私がいた」。

チームの中で右腕になろう、なんてことは一切意識していなかった、と加藤は言う。ただ、目の前のいただける仕事を、コツコツと。

「なんのためにこの仕事、小さいけど、この仕事を喜んでくれる人がいるんだろうな、って考えながら、丁寧にやっていた。そういう信用の積み上げですよね。これかな、って私は思います」。

「小さな仕事を、丁寧に積み重ねる」。

それが、加藤が信頼を築いてきた方法だ。松浪代表からは、こう言われるようになった。

「加藤さんだから、任せられます」。

加藤も、代表と同じ気持ちで応えている。松浪代表なら、この時どうするかな。そう考えながら、日々の判断を積み重ねる。

障害児育児と、仕事は地続き

生活の中で培った力が、仕事に生きるということ

加藤には、小学3年生の重度知的障害のある弟と、普通の小学校に通う兄がいる。二人の生活を並行して回すのは、想像を超える複雑さがある。

「兄は普通の小学校、弟は支援学校で、ちょっと遠い。学校行事も2倍あり。弟は放課後、療育に行くけど、お迎えも片道30分。お兄ちゃんは習い事もあるし、友達も家に来る。そして、私も仕事する」。

大変な生活だ。だが、加藤はこれをネガティブに語らない。

「なんか、いろんなこと同時進行でやってるんで、どういうふうに効率よく進めたらいいかな、って常に考える生活にも慣れきっちゃってて。障害の関係の手続きとかも大変で、調べるとこから含めて。そういうところは、すっごい仕事に生きますよね」。

仕事をもらった時点で、加藤の中では『ゲームスタート』だ。どう攻略してやろうか、と考える。効率よく進める方法を整理して、いい方法が見つかったらチームメンバーに共有する。

「生活の中で培った力こそ、仕事に一番生きる」。

加藤が、自分の同僚たち、お子さんの医療的なケアや病気療養のためにキャリアを諦めた女性たちと共につくる秘書チームである【Nami】のメンバーについて語る時にも、同じ視点が現れる。

「障害のある子とか、うちの子は喋れないんですけど、この子が何を考えてるんだろう、この子をどうしてあげたらできるようになるかな、って、いっぱい考える。それって、仕事にすごく関連してる。そういう能力を絶対持ってる人が、【おおなみこなみ】のメンバーには多いと思うんです」。

お母さんたちが、育児で培ってきた『見えないものを見る力、感じないものを感じる力』。それが、テキスト前提の在宅ワークの現場で、想像力として発揮される。加藤は、この会社のポテンシャルを、そう見ている。

時間泥棒に、ならないように

テキストコミュニケーションの、譲れないポリシー

加藤の中で、仕事をする上で最も大切にしていることがある。

「時間泥棒に、ならないように」。

「事務のバックオフィスの仕事って、忙しくて手が回らない人がいるから発生してるお仕事だと思うんです。だから、松浪さんに返すテキストコミュニケーションも、なるべく短く、分かりやすく、パッと見てわかるように。相手の時間を、あんまり取らないように」。

それは、代表に対してだけではない。下のメンバーに指示を出す時も、同じ姿勢だ。分かりやすく、短く、相手の時間を頂いている感覚を持つ。

そして、加藤が判断に迷った時の頼りになるのが、過去のチャット記録だ。

「チャット記録は、本当に貴重なデータだと思ってます。今までのやり取りとか、その人とのやり取りっていうのは、仕事する上での財産です。この人、この仕事ではこういうふうに返してきたから、多分これだったらこうだな、って」。

加藤は、自分がいなかった時期のチャット記録まで遡って読む。その人の癖、口調、判断の傾向。パーソナリティを分析するのが好きなのだ、と加藤は笑う。

「その人が考えていることに、入っていきたい」。

信頼できる仕事相手も、加藤の中で明確だ。営業リスト作成のような地味な仕事で、業種が混ざってきた時に『これはちょっと違うな』と備考に書いてくれる人。作業の中で気づいたことを、聞かれてなくても返してくれる人。仕事の先にいる利用者を想像している人。こういう人が信頼できる、と加藤は語る。

松浪代表の、お裾分け

困りごとに、価値を提供するというスタイル

加藤が【おおなみこなみ】で働き続けたい理由は、明快だ。

「松浪さん、本当に私の働いている背景もすごくわかってくださっていて。私のことも子供のことも、本当に幸せにしたい、って思ってくれていて」。

加藤は、代表の仕事のスタイルそのものに惚れ込んでいる。

「松浪さんは、自分のできることのお裾分けをしてくれている」。

困っている部分に目を向けて、それを仕事にしていく。助けが欲しい部分に、価値を提供する。松浪代表のこのスタイルを、加藤自身も体現していきたい、と言う。

会社の課題も、加藤ははっきり見えている。

「新しいこと始める時に、どんどん同じように手を挙げてくれる人が増えていったらいいなって、すごく思います。うちのチームのメンバーは、障害のあるお子さん、病気のあるお子さんを育てている方が多いので、『私できるかな』って、みんなすごく思うんです」。

チームメンバーのポテンシャルは高い、と加藤は確信している。生活の中で培ってきた、想像力と対応力。それを、仕事の場でも開花させたい。加藤自身が、その道を先に歩いている一人だ。

助けたい気持ちが、右腕への近道

これから右腕になる人へ、加藤の言葉

加藤は、自分が3年後・5年後もこの仕事を続けているつもりだ、と語る。

「楽しいです。生活をいろんな人に助けてもらってるんです、子供のことで。だから、私も人の役に立ちたい。自分のできることで誰かがハッピーになれるなら、喜んで。私自身もすごく楽しいですし」。

そして、これから右腕になっていく後輩たちへ、加藤はこう語った。

「自分がやってきたことでしか答えられないんですけど、本当に小さな仕事を丁寧に積み重ねて信頼を得てきた、って感じかなって。気づいたら、その繰り返しが信頼になっていた、って」。

「力になりたい気持ちと、目の前の小さなことを楽しむこと」。

それを使い続けていたら、気づいたら右腕になっていた。加藤の実感が滲む言葉だ。

だから今日も加藤は、岡山の自宅から【Nami】のディレクションを行い、松浪代表のバックオフィスを支え、複数のクライアントとやり取りをする。息子の療育のお迎えに行き、兄の宿題を見て、また仕事に戻る。生活と仕事が、地続きになっている。

もしいま、あなたが誰かの右腕として、「大きな仕事を任されないと信頼されないのか」と迷っているなら、加藤はこう言うはずだ。

「小さな仕事の積み重ねが、いちばん確かな信頼になる」。

編集後記

「気づいたら、いろんなチームに私がいた」という、驚くほど飾らない言葉。岡山大学の元事務職員が、クラウドソーシングサービスの検索欄に『障害児』と打ち込み、松浪代表のnoteに惚れて【おおなみこなみ】に飛び込んだのが2025年8月。それから1年足らずで、加藤氏は【Nami】ディレクションと代表直下の実務を担う中心人物になっている。

『時間泥棒にならない』『チャット記録は財産』『小さな仕事を丁寧に』。この地味に見える三つの流儀が、テキスト前提のこの会社で、加藤氏を右腕の座に押し上げてきた。障害児育児と仕事は地続きだ、という加藤氏の言葉は、この会社が生み出そうとしている働き方の輪郭を、静かに、しかし力強く示している。